すくわくプログラムの意義 公立保育士の育成とは ライセンス制度の効果 〜勉強会「保育士育成の成功事例を学ぶ」を開催〜

 一般社団法人 日本保育連盟(代表理事・杉村栄一)の勉強会「保育士育成の成功事例を学ぶ」が8月30日(金)に東京都中央区日本橋のオルクドールサロンで開催されました。勉強会に参加した会員の保育事業者ら約70人は東京都の子育て支援政策や豊島区の保育事例のほか、保育士育成において実績のある保育事業者の話に熱心に聞き入りました。

 勉強会では、東京都議会公明党で政務調査会長を務める松葉多美子都議が「チルドレンファースト社会の実現に向けて」というテーマで講演を行い、子どもの安心安全、遊び場、居場所、学びなど子ども政策の基本的な視点を一元的に規定し、自ら制定に関わった「東京都子ども基本条例」(2021年4月施行)を紹介しました。そのうえで、東京都が今年度から実施する「東京すくわくプログラム推進事業」について、「子どもたちの穏やかな成長にとって保育園と幼稚園、どちらを卒園しても同じ教育的なものを身に付けることができることが大事だと考えています」とプログラムの意義について語りました。また、事業への補助について新たにICT機器の購入経費、非常勤職員の人件費、研修経費も対象になることも明らかにしました。

「(都の第1子の保育料無償化は)そんなに遠くないところで実現していきたい」と話す松葉都議

 質疑では、今年7月に実施された都知事選挙で三選を果たした小池百合子知事が公約に掲げた第1子の保育料無償化(都では今年度から第2子以降が無償化)の開始時期について問われ、「そんなに遠くないところで実現していきたいというふうに思っています」と応えました。

 松葉都議に続いて、豊島区子ども家庭部の渡邊明日香保育課長が「豊島区の実践する保育士育成について」と題して講演。豊島区では5年連続で待機児童ゼロを維持、外国籍児童が増加している特徴を説明した後、区立保育士の年齢は50代が最も多く、次いで20代、30代と続き、40代は10.6%と少ないことに触れ、若手職員の育成や保育のノウハウの継承が課題になっていることなどを挙げました。

渡邊課長は子どもと家庭を支える地域の力の必要性を語りました

 渡邊課長は、保育士を育成しながら区全体で保育の質の向上を図る取り組みに向けて①子ども研修②保育の質向上研修③園内OJT④他機関実施の研修―など区独自のガイドラインにも触れ、「専門知識や技術の向上を図るほか地域全体で子どもと家庭を支えていく力を育成し、子どもの権利を尊重した保育につなげるようにしています」と話しました。

 区の子ども支援施策の考え方についての質問には「高際みゆき区長の考えとしてとにかく子どもに関することはスピード感を持って実現していくという強い思いがあります。保育園や幼稚園に通っていない子どもを保育園で預かる『こどもつながる定期預かり事業』を(行政の中でも)いち早く取り入れるなど、区長の英断で始まった事業も多々あります」と語りました。

 この日の最後は、AIAI Child Care株式会社の木本彰取締役が「保育士の専門性を高めるライセンス制度について」と同社の人的資本経営やライセンス制度について説明を行いました。

 木本氏は、同社の人的資本経営について①幼児教育プログラムの教科書の完備②社員一人ひとりの希望に応じたキャリアパス③カンボジアやフィンランドでのフィールドワークを通じた海外研修④保育の個別最適化の実践―などについて話した後、「保育士が論理的思考やコミュニケーション力を発揮するために重要な役割を担っているのがライセンス制度です」と同社独自のキャリアシステムに言及。施設課題を自ら解決し、全社のオペレーションの標準化や生産性の向上に向けた取り組みの体制が構築されることを制度の目的にしていると説明しました。

「論理的思考やコミュニケーション力を育むのがライセンス制度」と強調する木本氏

 同社のライセンス制度では、筆記試験のほか小論文や面接試験により、施設長ライセンス(1級と2級)と主任ライセンスが取得できるといいます。ライセンス取得者は、例えば施設長なら複数の施設を統括する母店施設長になるなど、それぞれのキャリアアップにつながっていくということです。また、施設長ライセンス取得者の中からは、星槎大学大学院に進学できるルートも設置しており、修了時には教育学修士を取得する施設長もいるといいます。

 木本氏は「私たちがライセンスを持っている方に求めるものは、自分の担当外の施設の課題の見つけ方だったり、課題解決の仕方、あるいは主任ライセンス向けの一般保育士の指導であったり、それができる機能としてライセンスを求めています」と制度の意義について強調しました。

 次回の勉強会は10月25日(金)に予定しています。

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