保育士の専門性向上や保護者と一体の取り組みが必要 ~勉強会「保育園における発達障害を考える」を開催~

 一般社団法人 日本保育連盟(代表理事・杉村栄一)の勉強会「保育園における発達障害を考える」が10月25日(金)に東京都中央区日本橋のオルクドールサロンで開催されました。勉強会では、行政、社会福祉法人、株式会社の各分野を代表して3人の保育園長や施設長が発達障害に関する課題や対応策、今後の保育の在り方についてパネルディカッション形式による討論を行いました。来場した会員の保育事業者ら約60人は、発達障害に関する保育士の専門性の向上や保護者理解、人材育成などのやりとりを熱心に聞き入りました。

会場には保育事業者をはじめ60人以上が訪れた

 この日のパネルディスカッションに参加したのは◇東京都港区立麻布保育園の加藤辰幸園長◇社会福祉法人ひまわり福祉会 ひまわりキッズガーデン有明の柴﨑瞳園長◇AIAI Child Care株式会社 AIAI NURSERY 四街道めいわの田中由華里施設長―の3人。

 討論では、発達障害児に対する保育の在り方と保護者支援を中心に議論は進められ、パネラーからは、「発達障害に対する専門知識を持った保育士がいてほしいと思っている」「発達障害児への対応は保育園だけでなく保護者と一体で取り組むべき」などの意見が出ました。

 AIAIの田中施設長は、自園では同じ法人で運営する児童発達支援施設「AIAI PLUSVISIT)への通所や訪問支援につなげ、ビデオカンファレンスを行い全職員で「どのような保育をしていくのか」を考えていると説明。その一方で、現状の発達障害児への対応の困難さからくる保育士の疲弊や離職などを例に専門知識を持った保育士の配置や子どもへの適切な支援の必要性を訴え、「保護者に子どもの実情を伝える難しさがある。保育士には伝えることの専門性やスキルも必要で、保護者ケアも一緒にやらないとうまくいかない」と話しました。

「保育士には伝える専門性やスキルも必要」と語る
AIAI NURSERY 四街道めいわの田中由華里施設長

 「子どもの支援レベルにより保育士での対応が難しい」と語るのは、ひまわりキッズガーデンの柴﨑園長。柴﨑園長は、特別支援教育や医療的ケアに関する専門スタッフがいないことで、「自閉症傾向なども子どもによって全くパターンが違うので保育計画を立てるにも知識が不足したり、教材も保育士が調べて作成したりと支援時に費やす時間もかかる」と話しました。保護者視点では、「お母さんたちは家で困っている場面もたくさんあると思う。巡回の先生(臨床発達心理士)と直接話をして園とつながっていくケースもある」と指摘しました。

お母さんたちは家で困っている場面もたくさんある」と話す
社会福祉法人ひまわり福祉会 ひまわりキッズガーデン有明の柴﨑瞳園長

 麻布保育園の加藤園長は、港区では公立15園に障害児ファシリテーターを配置し、障害児の発達への理解や支援方法を検討して保育の質の向上を進めていると説明。一方で、配慮を要する子どもに人員が紙面上で配置されたとしても、実際は派遣職員が見つからず、配置されないままという問題があることを指摘しました。また、保護者対応に関しては「子どもの姿は家庭と園とでは違うので、保護者からは『家ではできています、やれています』と言われることが多い。しかし、我々としてはネガティブな情報を保護者から教えて貰えるとありがたい」と話しました。

「ネガティブな情報を保護者から教えて貰えるとありがたい」と強調する
東京都港区立麻布保育園の加藤辰幸園長

 会場の参加者からの質問では、「子どもや保護者の気持ちの理解への取り組み」について聞かれ、加藤園長は「保護者の仕事や兄弟関係などバックボーンを知ることが大事」と答え、田中施設長は「個人面談も必ず全保護者と行うことが土台だ。保護者の言動を把握するようにしており、職員間での情報共有を常に心掛けている」と答えました。また、「保育士の心のケアや精神的なケアについてどうしているのか」という質問には、柴﨑園長が「雑談を増やし、目があったら会話をすることを心掛けている。ラボットというAIロボットを試しに導入したことがあり、休憩時間に新人職員がずっと抱っこして話しかけているということもあった」とのエピソードを披露していました。

 最後に問題解決のためにどうすればよいか、と問いかけたところー。田中園長は、「保育士が自信を持って保育ができ、保護者対応ができるようになる資格があったらいいと思う」。柴﨑園長は「子どもが小学校に上がった時に困らないようにしてあげたい。知識を得られる機会が必要だが、忙しくて研修に出せないことが問題」と語りました。加藤園長は「知識も必要だと思うが、子ども大人も楽しいと思えることが大事だと思うので、それぞれの気持ちを大事にしたい」と、想いを話してくれました。

発達障害に関する課題や対応策、今後の保育の在り方についてさまざまな議論が交わされた

 この日はパネルディスカッションに先立ち、認定保育士資格創設に向けたワーキンググループも行われ、園長クラス以外の現場の保育士もディスカッションに参加してくれました。参加してくれたのは、武田結実子保育士(東京都港区立麻布保育園)、原田真梨絵保育士(社会福祉法人ひまわり福祉会 ひまわりキッズガーデン有明の森)、山崎弓子保育士(AIAI Child Care株式会社AIAI NURSERY 四街道めいわ)です。ありがとうございました。

ワーキンググループでは認定保育士資格創設に向け、保育現場における課題抽出が行われた

 次回の勉強会は12月26日(木)。「タイミー保育士と活用事例を学ぶ」を予定しています。

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