子どもの「なぜ」が保育を変える~東京都後援、保育政策シンポジウムに100人超が参加~
一般社団法人日本保育連盟(代表理事・杉村栄一)は6月25日、東京都後援による保育政策シンポジウム「子どもが夢中になる保育~豊かな育ちとは何か~」を駒澤大学深沢キャンパスにあるアカデミーホールで開催しました。当日は都内外から保育関係者や自治体職員、保育士や園長ら100人を超える参加者が集まり、都が推進する「東京すくわくプログラム」を軸に子どもの主体性や探究活動を育む保育について理解を深めました。
「やってみたい」を育てる東京都の挑戦
開会にあたり、日本保育連盟の杉村栄一代表理事は、「子どもたち一人ひとりが主体的に学び、豊かに育つ保育を実現するためには現場で学び続ける保育者の存在が欠かせない。本日のシンポジウムが、その実践につながる機会になれば幸いです」と挨拶しました。
続く基調講演では、東京都子供政策連携室長の田中愛子氏が、「『東京すくわくプログラム』をはじめとする乳幼児期の子育ちを支える都の取組について」と題して講演を行いました。

田中氏は都の子ども基本条例や「子ども未来アクション」に基づく子ども政策を紹介しながら、「東京すくわくプログラムは、子どもたちの『やってみたい』という気持ちを保育の中心に据える取組です」と強調。実施園へのアンケート結果では、「子どもたちが『これをやりたい』と積極的に発言するようになった」「普段とは違う子どもの姿に驚いた」といった保育者の声が多数寄せられていることを紹介し、「探究活動は一度体験して終わるものではありません。日々の保育の中で子どもの『なぜ』『どうして』を大切に育てて、子どもの豊かな育ちを一緒に作っていただきたい」と参加者に呼びかけました。
現場で広がる夢中になる保育
パネルディスカッションでは「子どもが夢中になる保育とは何か」をテーマに自治体、区立保育園、社会福祉法人、民間保育園の立場から実践活動が報告されました。
豊島区保育課の八木知子課長は、区内で進める保育の質向上の取組を紹介し、「保育士と専門家が一緒に子どもの姿を振り返り、『次にどう探究を広げるか』を考える時間を大切にしています」と説明した。外部講師に任せきりにするのではなく、保育者自身が子どもの姿を深く読み取り、次の保育へつなげる仕組みづくりが重要だと強調しました。
豊島区立要町保育園の田部恵子園長は、アーティストと協働した「光る家づくり」を紹介。「子どもたちの『もっと大きいものを作ってみたい』という声が出発点でした」と振り返り、ブラックライトや蛍光塗料、大型段ボールなど普段とは異なる素材を活用したことで、「子どもたちの発想や言葉が大きく広がりました」と説明しました。

社会福祉法人不動福祉会すみれ保育園の肥沼直美園長は、0歳児から5歳児まで全園児が探究活動に取り組みについて、「探究は特別な教材がなくてもできます。子どもたちは身近な素材でも夢中になり、自分らしく表現する力を持っています」と話しました。
また、「活動後には必ず職員全員で振り返りを行い、子どもの姿を言葉にして共有しています。それが保育者自身の学びや専門性の向上にもつながっています」と語り、探究活動は子どもだけでなく保育者も成長する機会であると述べました。
AIAI Child Care株式会社AIAI NURSERY第二東池袋の柴田亮施設長は、散歩中に子どもが発した「どうしてパトカーの光るところは赤いの?」という何気ない一言から、「気持ち」をテーマにした探究活動に発展した事例を紹介しました。当時は、保育者全員が「これは一年間のテーマになると感じた」と語り、「大人は『楽しい色』を決めつけがちですが、子どもは『紫が好きだから楽しい』と話します。子どもが保育者に新しい気づきを与えてくれた瞬間でした」と振り返りました。
子どもの声が保育を豊かにする
討論では、地域との連携や保護者との協働に加え、保育活動におけるAIとの向き合い方も話題となりました。登壇者からは、「AIは便利な道具だが、まずは子ども自身が見て触れて不思議に思う体験が大切」「答えを知る前に、自分で考え、試してみることが大事」などの意見が相次いぎました。
最後にファシリテーターを務めた日本保育連盟事務局長の石元悠生氏が「行政、自治体、そして保育現場に共通していたのは子どもの『なぜ』『どうして』に耳を傾け、その問いを探究へと広げていくことこそが、夢中になる保育の原点ではないでしょうか」と総括しました。

閉会挨拶では、日本保育連盟理事の貞松成氏が、「本日示された活動事例を、それぞれの保育現場で是非生かしていただきたい」と呼びかけるとともに、「今年度からスタートした認定保育士プログラムを通じて、子どもの主体性や探究活動を支える保育者の育成にも力を入れていきます」と述べ、保育者のさらなる資質や専門性の向上に期待を寄せました。
なお、田中愛子氏が基調講演で使用した資料については、都の了承を得て記事の末尾に公開します。「夢中になる保育」のために、ご活用ください。
